社会福祉法人のM&A・合併・事業譲渡トータルサポート、承ります
社会福祉法人のM&A(売却・買収)合併(新設合併・吸収合併)事業譲渡(売買・譲渡)の斡旋・仲介や譲渡手続のお手伝いをさせて頂きます。
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● 事業承継を希望される地域のニーズや競合の調査
● どのような事業承継の形態が適切かの事前のご相談
● 事業承継を希望される売り手法人様と買い手法人様の協議の支援
● 事業承継計画立案の支援
● 事業承継に必要な各種の手続の代行
● 事業承継に必要な各種の許可認可の申請代行
● 事業承継に必要な各種の書類の準備
● 助成金・補助金の申請や金融機関の融資などの資金調達支援
● 求人手続・採用面接など人材の確保
● 社会福祉法人の設立・合併・解散の手続
● 社会福祉法人の事業承継に関する法律問題についての企業法務
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社会福祉法人の事業承継・M&Aのサポート、すべて承ります
■事業承継M&Aの実行手続の支援・必要書類の作成
【1】買い手探し
(1)業務委託契約の締結
アドバイザー契約を締結
(2)企業概要書の作成
対象会社の概要につきアドバイザーとして作成
(3)打診活動
候補先を探す際に初期的な関心を得るため対象会社を特定せず打診に活用する匿名資料(ノンネームシート)を作成
(4)秘密保持契約(NDA)の締結
初期的な関心を示した会社に対して締結
(5)企業概要書の提示
実際に買収するか否か判断する資料
(6)意向表明書の取得
関心を示した会社が対象会社に対して一方的に条件等を提示
(7)基本合意書の作成
意向表明書の条件に基づいて締結
【2】実行の手続
(1)買収監査(デューデレジェンス)の資料整理
対象会社の財務・税務・法務等の情報につき必要に応じて専門家に依頼して実態を調査
(2)買収条件の交渉
(3)最終契約の締結
表明保証、取引実行の前提条件、補償事項も記載
事業譲渡手続の解説
※厚生労働省 福祉基盤課 令和2年9月11日「社会福祉法人の合併・事業譲渡マニュアル」より抜粋
(1)事業譲渡等におけるポイントと留意事項
【1】事業譲渡等とは
事業譲渡等とは、特定の事業を継続していくため、当該事業に関する組織的な財産を他の法人に譲渡・譲受することであり、土地・建物などの単なる物質的な財産だけではなく、事業に必要な有形的・無形的な財産のすべてを他の法人に譲渡・譲受することです。事業譲渡と事業譲受を総称して「事業譲渡等」とします。以下に事業譲渡等における主なポイントと留意事項をまとめます。
・社会福祉法人が関係する事業譲渡等は、事業に関わる利用者へのサービス提供の継続に資するためのものと考えられます。
・社会福祉法において、事業譲渡等に関する規定は設けられていませんが、取引行為の一類型であるため、事業譲渡等は可能と解釈されています。ただし、社会福祉法人の事業譲渡等には、一般的に法人の定款変更手続、基本財産の増減等が発生するものと考えられ、所轄庁の認可・届出が必要となります。なお、社会福祉法人は『社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人』であるため(社会福祉法第 22 条)、社会福祉法人が行っている社会福祉事業の全部を譲渡することはできないと考えられます。
・社会福祉法人における基本財産は、法人存立の基礎となるものであり、これを処分し、又は担保に供しようとする場合には、所轄庁の承認を受けなければならず、社会福祉法人の目的遂行上真に必要である場合に限り認められるものと考えられます。
【2】譲渡事業が譲受法人で継続可能かどうか事前確認等
社会福祉事業は所轄庁による認可が必要な事業も多くあり、また社会福祉事業を実施できる法人格が制限されているものもあります。譲渡事業が譲受法人で継続可能かどうか、当該事業の許認可等を行う行政庁(以下この章において「事業所管行政庁」という。)に必ず事前確認し、必要な協議を終えておくようにしてください。
譲渡事業が譲受法人で継続可能でない場合の事業譲渡は実施できません。
特に、社会福祉事業は第1種・第2種社会福祉事業に区分され、このうち第1種社会福祉事業については、原則として行政及び社会福祉法人しか経営主体となれません。
<第1種社会福祉事業>
・救護施設 ・更生施設 ・その他の生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設 ・生計困難者に対する助葬事業
・乳児院 ・母子生活支援施設 ・児童養護施設 ・障害児入所施設
・児童心理治療施設 ・児童自立支援施設
・養護老人ホーム ・特別養護老人ホーム ・軽費老人ホーム
・障害者支援施設 ・婦人保護施設 ・授産施設 ・生活福祉資金貸付事業
事業の譲渡においては、利用者へのサービス提供が継続されることが何よりも重要です。このため、譲渡法人では相手方法人を様々な視点から調査分析し、譲受先法人を選定することが重要です。こうした過程は、所轄庁及び事業所管行政庁から説明を求められた場合には説明責任がありますので、よく整理しておくとよいでしょう。
【3】行政への相談(各種手続)
事業譲渡等は、基本財産の移動を伴うこともあり、所轄庁の承認や国庫補助事業により取得した財産の処分にかかる承認、さらには、独立行政法人福祉医療機構又は民間金融機関の借入債務にかかる各種手続(抵当権の設定等)などクリアすべきものも多いと考えられます。このため、所轄庁等への事前の相談・協議を並行して進めていくことが重要です。
また、事業譲渡等は、譲渡元である法人における施設の廃止手続と、譲渡先における施設の認可・指定等の手続をスムーズに実施することが求められます。このため、所轄庁への事前相談等と同時に、事業所管行政庁にも事前相談を進めていくことが必要となります。
【4】特別の利益供与の禁止等
平成28年改正法により、役員等関係者への特別な利益供与の禁止、競業及び利益相反取引の制限等が規定されています。
◇特別の利益供与の禁止
特別の利益とは、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇のことを指し、例えば以下のようなものが該当します。【指導監査ガイドライン Ⅳ管理 4その他(1)特別の利益供与の禁止より】
A: 法人の関係者からの不当に高い価格での物品等の購入や賃借
B: 法人の関係者に対する法人の財産の不当に低い価格又は無償による譲渡や賃貸(規程に基づき福利厚生として社会通念に反しない範囲で行われるものを除く。)
C: 役員等報酬基準や給与規程等に基づかない役員報酬や給与の支給
事業譲渡等の相手先によっては、上記AやBに抵触するおそれがあることから、十分な留意が必要となります。
※社会福祉法第27条(特別の利益供与の禁止)
第27条 社会福祉法人は、その事業を行うに当たり、その評議員、理事、監事、職員その他の政令で定める社会福祉法人の関係者に対し特別の利益を与えてはならない。
※社会福祉法施行令第13条の2(特別の利益を与えてはならない社会福祉法人の関係者)第13条の2 法第27条の政令で定める社会福祉法人の関係者は、次に掲げる者とする。
一 当該社会福祉法人の設立者、評議員、理事、監事又は職員
二 前号に掲げる者の配偶者又は三親等内の親族
三 前2号に掲げる者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
四 前2号に掲げる者のほか、第1号に掲げる者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持する者
五 当該法人の設立者が法人である場合にあっては、その法人が事業活動を支配する法人又はその法人の事業活動を支配する者として省令で定める者
◇利益相反取引の制限
利益相反取引の制限では、例えば、甲社会福祉法人の理事Aが乙株式会社の代表として乙株式会社のために甲社会福祉法人と売買契約を締結する場合は利益相反取引に該当することから、このような事業譲渡を行う場合には、理事会において重要な事実を開示し、その承認を受ける必要があります。
※社会福祉法第45条の16第4項によって準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条(競業及び利益相反取引の制限)
第84条 理事は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 理事が自己又は第三者のために社会福祉法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 理事が自己又は第三者のために社会福祉法人と取引をしようとするとき。
三 社会福祉法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において社会福祉法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 (略)
【5】事業譲渡等の支払対価の決定プロセスの留意点
事業譲渡等の支払対価を決定するためには、事業の適切な評価が必要となります。
事業を評価するにあたっては、様々な視点からの調査・分析*を行います。
・財務調査・分析
・法務調査・分析
・その他調査・分析(人事、IT 等)
特に「財務調査・分析」は、譲受ける資産・負債の価値が適切かどうかを検証し、財務リスクを明確にするものであり、支払対価の決定にあたって重要な意義を持ちます。
<主な検証ポイント>(譲渡法人に対して調査協力を求め、情報を収集・分析します)
・会計方針の把握、検証
・帳簿査閲による異常な取引の内容確認
・経営成績、財政状態、主要な経営指標の経年比較分析
・予算・実績差異の分析
・銀行残高証明書の入手、照合
・固定資産の実在性確認
・引当金の計上有無、妥当性の検討
・損害賠償請求の有無確認
・役員報酬、給与水準の検討
また、上記に加えて、外部環境分析(市場の状況や競合する他法人の状況)を実施することで、将来的な財務リスクを支払対価の決定に反映することも可能です。なお、調査・分析にあたっては、弁護士や公認会計士等の専門家を活用することが有効となる場合があります。(*調査・分析のことをデューデリジェンスと呼ぶことがあります)
支払対価の検討は、社会福祉法人の公的財産が毀損することのないよう、慎重に行う必要があります。こうした過程は、所轄庁等から説明を求められた場合には説明責任がありますので、よく整理しておくとよいでしょう。
【6】法人外流出の防止と支払対価の関係
社会福祉法人において、社会福祉事業の剰余金は一定の条件のもと法人本部会計又は公益事業に充てることができますが、法人外への対価性のない支出は認められていません。
(「社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費の運用及び指導について」H16.3.22 局長通知 ほか)
このような法人外への資金流出禁止の前提があるため、事業譲渡等の支払対価との関係で以下の点について留意する必要があります。
・譲渡側
自法人における譲渡事業の価値を見積り、少なくともその価値以上の受取対価でなければ、法人外への資金流出に該当すると考えられる。
・譲受側
自法人における譲受事業の価値を見積り、少なくともその価値以下の支払対価でなければ、法人外への資金流出に該当すると考えられる。
事業譲渡等は組織の移転であるため、当該事業の価値は、対象事業の不動産の時価と移転する他の資産及び負債だけではなく、事業計画(将来の損益予測や修繕計画など)を加味したものと考えられます。単に国庫補助金を返還しないための無償譲渡など、事業の価値を適切に見積らずに取引を行うと、法人外流出の可能性があることに特に注意する必要があります。
また、平成28年改正法では、社会福祉法人と評議員、役員等の委任規定、いわゆる善管注意義務、義務違反の場合における法人への損害賠償責任、第三者への不法行為責任などが明確化されています。このため、法人評議員、理事、監事等は、社会福祉法人に財産上の損害を与えることが無いよう職務を行う必要があります。
※社会福祉法第38条(社会福祉法人と評議員等との関係)
第38条 社会福祉法人と評議員、役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
※民法644条(受任者の注意義務)
第644条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
※社会福祉法第45条の20(役員等又は評議員の社会福祉法人に対する損害賠償責任)
第45条の20 理事、監事若しくは会計監査人(以下この款において「役員等」という。)又は評議員は、その任務を怠ったときは、社会福祉法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 理事が第45条の16 第4項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条第1項の規定に違反して同項第1号の取引をしたときは、当該取引によって理事又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3 第45条の16 第4項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条第1項第2号又は第3号の取引によって社会福祉法人に損害が生じたときは、次に掲げる理事は、その任務を怠ったものと推定する。
一 第45条の16 第4項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条第1項の理事
二 社会福祉法人が当該取引をすることを決定した理事
三 当該取引に関する理事会の承認の決議に賛成した理事
※社会福祉法第45条の21(役員等又は評議員の第三者に対する損害賠償責任)
第45条の21 役員等又は評議員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等又は評議員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 (略)
※社会福祉法第 130 条の 2
第130条の2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は社会福祉法人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該社会福祉法人に財産上の損害を加えた ときは、7年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 評議員、理事又は監事
二 民事保全法第 56 条に規定する仮処分命令により選任された評議員、理事又は監事の職務を代行する者
三 第 42 条第2項又は第 45 条の6第2項(第 45 条の 17 第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時評議員、理事、監事又は理事長の職務を行うべき者
2・3 (略)
【7】国庫補助金の取り扱い
社会福祉法人が国庫補助金を受けて取得した財産を処分する際には、厚生労働大臣等の承認が必要となります。
※厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分承認基準における財産処分の種類
・転 用:補助対象財産の所有者の変更を伴わない目的外使用
・譲 渡:補助対象財産の所有者の変更
・交 換:補助対象財産と他人の所有財産との交換
・貸 付:補助対象財産の所有者の変更を伴わない使用者の変更
・取壊:使用を止め、取り壊すこと
・廃 棄:使用を止め、廃棄処分すること
承認にあたっては、交付した国庫補助金に相当する額の返還(国庫納付)や、返還を求めない場合であっても処分を制限するなどの条件を付すこととなっています。なお、国庫補助金を返還しないための無償譲渡は、法人外流出の可能性があることに特に注意する必要があります。
【8】利用者等への事前説明と理解の醸成
事業譲渡等の対象となる施設の利用者については、契約主体の変更になるため、利用者や利用者家族への説明及び個別同意を得る(再契約を行う)必要があります。
事業譲渡等によって、利用契約の再締結の手続の有無や方法(例:高齢者施設における入所契約及び重要事項説明書等)、サービス内容や利用料金の変更の有無等についてあらかじめ十分に説明した上で、同意を得るようにしてください。
【9】職員への事前説明・了解
業譲渡等において、譲渡法人から譲受法人へ職員を転籍させる場合、事業譲渡等においては、既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となります。
(事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(H28 厚生労働省告示第 318 号))
労働条件を変更する際には、転籍対象者に転籍後の労働条件を記載した同意書を提示し、同意をとっておく必要があります。また、退職・雇用を取り扱う場合は、譲渡会社では退職届を受領し、譲受会社では雇用契約を締結するなどの手続きが必要になります。
なお、労働条件が変更される場合は、就業規則と労働契約等との関係に注意し、所轄労働基準監督署への届出と、届出をしたうえで、職員への周知を行う必要があります。なお、就業規則の労働基準監督署への届出を行う際には、過半数労働組合がない場合、事業場ごとに過半数代表者を選出して、就業規則に関する意見を聴取しなくてはなりません。
【10】地域住民への事前説明
事業譲渡等によって、特に地域における福祉サービスについて変更等が生じる場合には、地域住民や自治会への説明を行うことが望まれます。社会福祉法人の事業譲渡等の経緯及び今後の実施事業計画に関して理解を得ておくようにしてください。
【11】不適切と考えられる例
事業譲渡等の内容は、移転する事業、社会福祉法人や地域ニーズなどによって様々なケースが想定できます。以下は不適切と考えられる例ですが、これ以外であればすべて適切というものではありません。事業譲渡等を行う場合には、当該事業に関わる利用者へのサービス提供の継続性を第一に考え、社会福祉法人内で十分検討を行い実施することが必要です。
<例1>
社会福祉法人Aから他の法人Bに対し、①~③をすべて満たすような事業の譲渡しが行われた場合
- 社会福祉法第27 条の特別の利益供与の禁止の対象となる社会福祉法人の関係者 が、事業を譲受けた法人Bの関係者であった場合
- 当該事業の譲渡し価格に関し、社会福祉法人Aにおける評価の過程が明確でなく、適切な価格なのか判断できない場合
③(イ)から(ニ)のような特段の事情がない場合
(イ) 社会福祉法人Aにおいて、事業を継続しがたい特段の理由がある。
(ロ) 社会福祉法人Aにおいて、当該事業の収支が赤字で推移しており、将来も改善する見通しがない。
(ハ) 当該地域において、事業の譲渡しが可能な他の法人がない。
(ニ) 当該地域において、当該事業のニーズが減少する見通しがある。
<例2>
社会福祉法人Cが他の法人Dから、次の①、②をすべて満たすような事業の譲受けが行われた場合
- 社会福祉法第 27 条の特別の利益供与の禁止の対象となる社会福祉法人の関係者が、事業を譲渡した法人Dの関係者であった場合
- 当該事業の譲受け価格に関し、社会福祉法人Cにおける評価の過程が明確でなく、適切な価格なのか判断できない場合
(2)事業譲渡等の手続の全体像
【1】事業譲渡等における手続の構成
事業譲渡等において個別の手続は、以下のように大きく 5 つに分類されます。
- 法人間調整(合意形成・契約)
事業譲渡等を検討している法人間での調整業務
- 調査・検討の準備
- 事前調査
- 事業譲渡等の合意形成
- 法令手続き(行政等との調整)
- 事業に係る各種申請
- 定款の変更
- 会計・税務処理
III. 資産・負債等の移管手続
- 資産・負債等の移管
- 関係者調整等(職員や利用者等との調整)
・譲渡事業等に関係する職員との調整
- 人事・労務関連
・譲渡事業等に関係する利用者や家族への説明及び地域への説明
- 利用者や利用者家族、地域への説明
- 事業譲渡等の後に必要となる手続等
事業譲渡等後の法人内運営に必要となる手続き事項
- 規程・マニュアル類、システムなどの整備
(3) 事業譲渡等手続の解説
1 . 調査・検討の準備
- 実施事項
(1)譲渡事業が譲受法人で継続可能かどうか事前確認等
社会福祉事業は所轄庁による認可が必要な事業も多くあり、また社会福祉事業を実施できる法人格が制限されているものもあります。譲渡事業が譲受法人で継続可能かどうか、事業所管行政庁に必ず事前確認し、必要な協議を終えておくようにしてください。
譲渡事業が譲受法人で継続可能でない場合の事業譲渡は実施できません。
特に、社会福祉事業は第 1 種・第 2 種社会福祉事業に区分され、このうち第 1 種社会福祉事業については、原則として行政及び社会福祉法人しか経営主体となれません。
<第 1 種社会福祉事業>
・救護施設 ・更生施設 ・その他の生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の
扶助を行うことを目的とする施設 ・生計困難者に対する助葬事業
・乳児院 ・母子生活支援施設 ・児童養護施設 ・障害児入所施設
・児童心理治療施設 ・児童自立支援施設
・養護老人ホーム ・特別養護老人ホーム ・軽費老人ホーム
・障害者支援施設 ・婦人保護施設 ・授産施設 ・生活福祉資金貸付事業
事業の譲渡においては、利用者へのサービス提供が継続されることが何よりも重要です。このため、譲渡法人では相手方法人を様々な視点から調査分析し、譲受先法人を選定することが重要です。こうした過程は、所轄庁及び事業所管行政庁から説明を求められた場合には説明責任がありますので、よく整理しておくとよいでしょう。
調査・検討の準備を行う場合に実施事項と考えられるものは以下のとおりです。
(1) 事業譲渡方針の相互確認及び秘密保持契約(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等を行う法人間で相互方針を確認します。検討を進めるにあたり、秘密保持契約を締結し、初期資料の共有を行います。
(2) 事前協議の実施(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等を行う法人間で事前協議を十分に行い、事業譲渡等の目的や方針を確認します。
(3) 基本合意書の締結(譲渡側、譲受側)
事前調査を円滑に行うために基本合意書を締結することが望まれます。詳細な調査などが、基本合意後に行われることが一般的です。
(4) 委員会などの設置(譲渡側、譲受側) 事業譲渡等の実施に向けた調査や協議を進めるための組織を設置し、担当者を選任します。
- 実施内容
(1) 事業譲渡方針の相互確認及び秘密保持契約(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の目的や方針を互いの法人で齟齬がないように、事業譲渡等を行う法人間で相互方針を確認します。検討を進めるにあたり、一般的には、秘密保持契約を締結し、初期資料の共有を行い、事業譲渡等について検討を進めることとなります。
(2) 事前協議の実施(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の目的や経緯、事業譲渡等後の理念、譲渡譲受する事業の現状や事業譲渡等の条件、譲渡譲受後の施設の運営方針、職員処遇のあり方など、事業譲渡等の大前提となる事項について、事前に十分協議しておきます。
(3) 基本合意書の締結(譲渡側、譲受側)
円滑に協議を進めるためには、基本合意書を締結し、譲渡法人が調査に協力できるように基本事項の合意をしておくことが望まれます。事業についての詳細な調査・分析は、基本合意後に行われることが一般的です。
(4) 委員会などの設置(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等は、合併のように消滅する法人の権利義務の一切が包括的に存続法人に当然に引き継がれるものではなく、契約に基づき、合意された範囲内で権利義務が移転します。
このため、契約によって引き継ぐ資産や負債の内容を自由に決めることができますが、一方で、移転する範囲を決めるため個々に交渉する煩雑さが生じます。相互の法人で検討委員会などプロジェクトチーム及び担当者を選定した上で、各種調査や検討、協議を行っていくことが望まれます。
2.事前調査
【1】実施事項
事前調査を行う場合に実施事項と考えられるものは以下のとおりです。
- 事前調査の実施(主に譲受側)
- 譲受可否および譲受条件の検討(譲受側)
譲受法人は譲渡事業の現状を調査し、譲受の可否や譲受の条件を検討します。
【2】実施内容
(1) 事前調査の実施(主に譲受側)
譲受法人は、事業譲渡等の可否を判断するために、譲渡事業の財務内容や運営形態などに大きな問題がないか適切に調査を実施します。
調査を円滑に進めるためには、譲渡法人から必要な協力を得ること、プロジェクトメンバーの要員を十分確保すること、外部の専門家(弁護士や公認会計士等)を活用することなどがポイントとなるでしょう。
ケースによって相違がありますが、主な調査項目は以下のとおりです。
◇財務状況の確認
譲受事業に関する計算書類を入手し、財務的な問題点や課題がないかを確認します。また、譲渡対象事業の基本財産に譲渡法人における他事業の抵当権が設定されていないか、あるいは簿外債務がないかも併せて確認する必要があります。必要に応じて外部の専門家(弁護士またはや公認会計士等)へ調査を依頼します。
◇人件費関連の確認
譲渡事業に関する職員を受入れる場合、事前に移籍対象者と譲受法人の職員の給与バランスや人件費増加に対する費用対効果などを確認する必要があります。そのため、事業譲渡等の事前調査の段階で人件費に関わるシミュレーションを実施し、問題点や課題の確認を行うことが重要です。
◇運営形態の確認
事業譲受後の運営について具体的な方向性や、それによって享受されるメリット・デメリットを事前に検討しておくことが重要です。
場合によっては運営形態の変更も含めて検討します。その際、第1種社会福祉事業については、設置義務及び許認可権を持つ都道府県などの行政の意向や要望を充分に踏まえることが必要となります。
また、事業譲渡等を行う一方で事業の一部を廃止するような場合は、介護保険事業など都道府県(市町村)事業計画に影響も生じるため、事前に関係行政機関とよく相談することが必要です。
◇収支シミュレーション
事業譲渡等後の収支シミュレーションを実施し、将来的に財務面で影響を及ぼす内容について調査を行います。特に運営形態を変更する場合や報酬の改定が予定されている場合など、事業譲渡等の前後で収支に大きな変化がある場合は、それらの要素を織り込んだ上で収支シミュレーションを行います。
(2) 譲受け可否および譲受け条件の検討(譲受側)
調査結果を踏まえ、譲受け可否の検討を行います。また、譲受ける場合は、譲渡後の事業が円滑かつ効率的に運営するための各種要素(許認可の追加等)について整理を行います。その内容をもとに譲渡法人に対して事業を譲受ける際の条件を提示します。
【3】注意点・留意すべきポイント
(1)所轄庁等への事前相談・協議
事業譲渡等は、基本財産の処分を伴うこともあり、所轄庁の承認や国庫補助事業により取得した財産の処分にかかる承認、さらには、独立行政法人福祉医療機構又は民間金融機関の借入債務にかかる各種手続(抵当権の設定等)などクリアすべきものも多いと考えられます。
このため、所轄庁等への事前の相談・協議を並行して進めていくことが重要です。
(2)事業譲渡等の支払対価の決定プロセスの留意点
譲受法人側にて、事業譲渡等の支払対価を検討するためには、事業の適切な評価が必要となります。事業を評価するにあたって、様々な視点からの調査・分析※を行います。
・財務調査・分析
・法務調査・分析
・その他(人事、IT 等)
特に「財務調査・分析」は、譲受ける資産・負債の価値が適切かどうかを検証し、財務リスクを明確にするものであり、支払対価の決定にあたって重要な意義を持ちます。
<主な検証ポイント>
・会計方針の把握、検証
・帳簿査閲による異常な取引の内容確認
・経営成績、財政状態、主要な経営指標の経年比較分析
・予算・実績差異の分析
・銀行残高証明書の入手、照合
・固定資産の実在性確認
・引当金の計上有無、妥当性の検討
・損害賠償請求の有無確認
・役員報酬、給与水準の検討
また、上記に加えて、外部環境分析(市場の状況や競合する他法人の状況)を実施することで、将来的な財務リスクを支払対価の決定に反映することも可能です。おな、調査・分析にあたっては、弁護士や公認会計士等の専門家を活用することが有効となる場合があります。(※調査・分析のことをデューデリジェンスと呼ぶことがあります)
支払対価の検討は、社会福祉法人の公的財産が毀損することのないよう、慎重に行う必要があります。こうした過程は、所轄庁等から説明を求められた場合には説明責任がありますので、よく整理しておくとよいでしょう。
【4】事例における取組み・工夫点
調査事例(以下、法人 A のケース。)では、譲受側の法人が事前調査を入念に行い、譲受ける事業の運営が行政から認められたため、円滑に協議が進みました。さらに、事業の改善が見込まれたことも譲受を承諾するポイントとなりました。
(調査事例:法人 A のケース)
・人件費関連の確認
両法人の給与水準に差がなく、想定以上の人件費負担は見込まれなかった
・運営形態の確認
譲受事業を、譲受法人の持つ既存事業と一体で運営することにより、人材不足を解消し人員を追加することなく運営改善が可能となり、収支改善計画が立てられた
・収支シミュレーション
事業を改善することができたため、収支に問題がないことを確認できた
3 . 事業譲渡等の契約
【1】実施事項
事業譲渡等の合意形成を行う場合に実施事項と考えられるものは以下のとおりです。
(1) 事業譲渡等契約の作成・締結(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の条件や内容が確定的になれば、事業譲渡契約書を作成し、契約締結します。
【2】実施内容
(1) 事業譲渡等契約の作成・締結(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の条件や内容が確定的になり、行政との調整に目処がついた段階で、事業譲渡契約書を作成します。事業譲渡契約書は、法律上必ず作成しなければならないものではありません。しかし、事業譲渡等の重大性や、後日の紛争を防ぐために作成することが望まれます。
事業譲渡契約は、基本財産の処分、予算外の新たな義務負担等が発生することがあるため、事業譲渡契約を締結する際には、重要な業務執行の決定に該当する場合には理事会で、事業譲渡契約等の承認を決議しておくことが望まれます。
【3】注意点・留意すべきポイント
(1)理事会及び評議員会での決議
互いの法人の理事会で重要な財産の処分・譲受けに関する決議を得るとともに、基本財産の取得(処分)・定款変更について評議員会における決議を得なければなりません。
なお、これらの決議は議事録として記録を残すことが必要です。
4.事業にかかる各種申請
【1】実施事項
事業にかかる各種申請における実施事項は以下のとおりです。
- 基本財産処分の申請(譲渡側)
譲渡法人は、譲渡事業の基本財産について、財産処分の申請を所轄庁に行います。
(2) 補助金にかかる財産処分の申請(譲渡側)
譲渡事業に対して国および都道府県から補助金交付を受けている場合、譲渡法人は財産処分の申請を行います。
(3) 施設の廃止申請および設置の申請(譲渡側、譲受側)
譲渡法人は、譲渡事業について施設の廃止申請を行い、譲受法人は、譲受けた事業について施設の設置申請を行います。
(4) 付随機能の申請(譲渡側、譲受側)
その他譲渡事業に付随する機能(付属診療所、付属保育園など)について申請が必要な場合は、それらについて担当窓口へ必要な申請を行います。
【2】実施内容
(1) 基本財産処分の申請(譲渡側)
譲渡法人が財産処分を行う際、基本財産の処分について評議員会の決議をした後に、所轄庁の承認を得る必要があります。
承認に必要な主な書類は以下のとおりです。
・財産処分承認申請書
・評議員会の議事録
・財産目録
・処分物件が不動産の場合は、その価格評価書
・対象施設の図面(面積の明記、国庫補助及びその他の別)
※社会福祉法人定款例第 29 条(基本財産の処分)
第29条 基本財産を処分し、又は担保に供しようとするときは、理事会及び評議員会の承認を得て、〔所轄庁〕の承認を得なければならない。ただし、次の各号に掲げる場合には、〔所轄庁〕の承認は必要としない。
一 独立行政法人福祉医療機構に対して基本財産を担保に供する場合
二 独立行政法人福祉医療機構と協調融資(独立行政法人福祉医療機構の福祉貸付が行う施設整備のための資金に対する融資と併せて行う同一の財産を担保とする当該施設整備のための資金に対する融資をいう。以下同じ。)に関する契約を結んだ民間金融機関に対して基本財産を担保に供する場合(協調融資に係る担保に限る。)
※社会福祉法第 45 条の 36(定款変更)
第45条の36 定款の変更は、評議員会の決議によらなければならない。
2 定款の変更(厚生労働省令で定める事項に係るものを除く。)は、所轄庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3・4 (略)
※社会福祉法施行規則第3条(定款変更認可申請手続)
第3条 社会福祉法人は、法第 45 条の 36 第2項の規定により定款の変更の認可を受けようとするときは、定款変更の条項及び理由を記載した申請書に次ぎに掲げる書類を添付して所轄庁に提出しなければならない。
一 定款に定める手続を経たことを証明する書類
二 変更後の定款
2 (略)
3 第1項の定款の変更が、当該社会福祉法人が従来経営していた事業を廃止する場合に係るものであるときは、同項各号のほか、廃止する事業の用に供している財産の処分方法を記載した書類を添付して所轄庁に申請しなければならない。
4 第2条第3項及び第5項の規定は、第1項の場合に準用する。
※社会福祉法施行規則第3条第4項によって準用される第2条第3項(定款変更認可申請手続)
第2条
3 所轄庁は、第3条第1項から第3項に規定するもののほか、不動産の価格評価表その他必要な書類の提出を求めることができる。
(2) 補助金にかかる財産処分の申請(譲渡側)
◇財産処分の承認申請
国庫補助により取得した財産を処分する場合は、財産処分の簡素化措置が認められるものを除き、定款に定められた所定の手続きを経て、当該処分についての承認申請を作成し、補助金申請の行政窓口へ提出しなければなりません。
添付書類の様式を所轄庁で用意している場合がありますので、担当窓口へ照会しつつ書類作成を進めてください。また、事業譲渡の趣旨、目的、背景など所轄庁の窓口に説明し、適宜相談し、円滑な申請が行えるようにすることが必要です。
承認に必要な主な書類は以下のとおりです。
・財産処分承認申請書
・財産処分の概要
・既存施設の図面(国庫負担(補助)対象部分、面積を明記したもの)
・既存施設の写真
・老朽度調書又は現存率評価調書
・評価調書(いわゆる定率法又は定額法により算定された調書)
・国庫負担(補助)金交付決定通知書及び確定通知書の写し(ない場合は交付額を確認できる都道府県、市町村等の決算書でも可)
・総事業費を確認できる決算書等
・その他参考となる資料
◇国庫補助事業により取得した財産処分報告書の提出
社会福祉施設等施設整備費及び設備整備費の交付を受けて整備された社会福祉施設等を無償により他の社会福祉法人に譲渡し、引き続き同一事業を継続して実施しようとする場合、譲渡しようとする法人は補助金申請の窓口となる都道府県に対し、財産処分報告書を作成し提出する必要があります。
この報告は財産処分の前に行う必要があり、報告事項の記載不備など必要な要件が具備されていない場合認められないこともあるので、補助金申請の窓口となる都道府県へ相談の上、手続きを行う必要があります。
報告に必要な主な書類は、以下のとおりです。
・財産処分報告書(処分内容、経過及び処分内容等を記載)
・対象施設の図面(国庫対象部分、面積を明記)
・対象施設の写真
・国庫負担(補助)金交付決定通知書及び確定通知書の写し(交付額を確認できる都道府県、市町村等の決算書でも可)
・その他参考資料
なお、間接補助事業については、都道府県が当面の国庫補助事業完了時から起算して厚生労働省が別に定める期間を経過するまで、財産処分の制限の条件が付されることがあることに注意が必要です。
財産処分報告書により報告があったものについては、厚生労働大臣の承認があったものとして取扱い、財産処分報告書は、当該都道府県の区域を所管する地方厚生局に提出します。
報告を行った場合には、当該財産処分に係る補助金相当額の国庫納付は不要です。
※祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備負担(補助)金に係る財産処分承認社会福手続の簡素化について(平成 12 年 3 月 13 日社援第 530 号3局 1 部局長通知)
(3) 施設の廃止申請および設置の申請
譲渡事業を途切れさせずに継続して運営するためには、廃止の認可等と設置の認可等に間をおかないよう、申請先と前広に相談しつつ、スケジュールの調整を図ることが必要です。
申請に必要な事項や申請先は種別や業務内容によって相違がありますので、所轄庁および事業所管行政庁の担当窓口に相談するようにして下さい。
◇譲渡法人の場合
事業譲渡等により運営法人が変更となるため、譲渡法人において施設の廃止申請を行います。
◇譲受法人の場合
上記と同時期に、譲受法人では施設の設置申請を行います。
※社会福祉法第 64 条(廃止)
第64条 第 62 条第1項の規定による届出をし、又は同条第2項の規定による許可を受けて、社会福祉事業を経営する者は、その事業を廃止しようとするときは、廃止の日の1月前までに、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。
※社会福祉法第 62 条(施設の設置)
第62条 市町村又は社会福祉法人は、施設を設置して、第一種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その施設(以下「社会福祉施設」という。)を設置しようとする地の都道府県知事に、次に掲げる事項を届け出なければならない。
一 施設の名称及び種類
二 設置者の氏名又は名称、住所、経歴及び資産状況
三 条例、定款その他の基本約款
四 建物その他の設備の規模及び構造
五 事業開始の予定年月日
六 施設の管理者及び実務を担当する幹部職員の氏名及び経歴
七 福祉サービスを必要とする者に対する処遇の方法
2~6 (略)
(4)付随機能の申請
その他譲渡事業に付随する機能について申請が必要な場合は、譲渡事業本体と同様に各種申請を遅滞なく実施します。
例:譲渡法人内に設置された施設内保育園の運営について、施設の譲渡とともに譲受法人で活用する場合の保育所の廃止および設置申請
【3】注意点・留意すべきポイント
事業譲渡等は、基本財産の処分を伴うこともあり、所轄庁の承認や国庫補助事業により取得した財産の処分にかかる承認、さらには、独立行政法人福祉医療機構又は民間金融機関の借入債務にかかる各種手続(抵当権の設定等)などクリアすべきものも多いと考えられます。このため、所轄庁等への事前の相談・協議を並行して進めていくことが重要です。
また、事業譲渡等は、譲渡元である法人における終了手続と、譲渡先における開始手続をス
ムーズに実施することが求められます。所轄庁には、法人担当となる窓口と、施設認可等にかかる窓口があるため、同時に相談を進めていくことが必要となります。
(1)国庫補助金の取り扱い
社会福祉法人が国庫補助金を受けて取得した財産を処分する際には、厚生労働大臣等の承認が必要となります。
※厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分承認基準における財産処分の種類
・転 用 :補助対象財産の所有者の変更を伴わない目的外使用
・譲 渡 :補助対象財産の所有者の変更
・交 換 :補助対象財産と他人の所有財産との交換
・貸 付 :補助対象財産の所有者の変更を伴わない使用者の変更
・取壊し:使用を止め、取り壊すこと
・廃 棄 :使用を止め、廃棄処分すること
承認にあたっては、交付した国庫補助金に相当する額の返還(国庫納付)や、返還を求めない場合であっても処分を制限するなどの条件を付すこととなっています。
【4】事例における取組み・工夫点
調査事例では、「児童福祉法に基づく障害児施設」を譲受け、医療施設で事業を継続することとしました。主な申請は以下のとおりです。
◇譲受事業(施設)の廃止および申請
・児童福祉施設廃止申請および設置申請
・指定申請(障害児施設、短期入所障害福祉サービス、生活介護障害福祉サービス)
・障害者施設等入院基本料の受理に関する届出
・特殊疾患入院施設管理加算の受理に関する届出
◇補助金における財産処分申請
・財産処分申請
5 .定款の変更
【1】実施事項
定款の変更における実施事項は以下のとおりです。
(1) 定款変更の決議(譲渡側、譲受側)
・譲渡法人では、譲渡事業について、「事業の廃止および基本財産の処分」を評議員会で決議します。
・譲受法人では、譲受ける事業について、「事業および基本財産の追加」を評議員会で決議します。
(2) 定款変更申請(譲渡側、譲受側)
所轄庁へ定款変更を申請します。
【2】実施内容
(1) 定款変更の決議(譲渡側、譲受側)
◇譲渡法人の場合
事業を譲渡す法人は、譲渡事業に関して事業の廃止および基本財産の処分など定款変更に必要な事項について評議員会で決議します。決議内容については議事録に記録を残すようにします。
◇譲受法人の場合
事業を譲受ける法人は、譲受事業に関して事業および基本財産の追加など定款変更に必要な事項について評議員会で決議します。決議内容については議事録に記録を残すようにします。
なお、譲渡法人において「事業および基本財産の処分」の定款変更の決議が済んでいなければ、譲受法人の「事業および基本財産の追加」の定款変更の申請ができません。スケジュールに留意する必要があります。
(2) 定款変更申請(譲渡側、譲受側)
譲渡法人、譲受法人ともに定款変更を所轄庁へ申請します。
申請に必要な書類は以下のとおりですが、譲渡事業の内容や定款変更の内容によって添付する書類に違いがありますので、事前に所轄庁へ照会・相談するようにして下さい。
・社会福祉法人定款変更認可申請書
・理事会議事録
・評議員会議事録
・現行の定款
・変更後の定款
・事業計画書
・収支予算書(2か年)
・事業譲渡契約書
・施設長就任書・履歴書
※社会福祉法第 45 条の 36(定款の変更)
第45条の36 定款の変更は、評議員会の決議によらなければならない。
2 定款の変更(厚生労働省令で定める事項に係るものを除く。)は、所轄庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 第 32 条の規定は、前項の認可について準用する。
4 社会福祉法人は、第 2 項の厚生労働省令で定める事項に係る定款の変更をしたときは、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。
※社会福祉法施行規則第 3 条(定款変更認可申請手続)
第 3 条 社会福祉法人は、法第 45 条の 36 第 2 項の規定により定款の変更の認可を受けようとするときは、定款変更の条項及び理由を記載した申請書に次に掲げる書類を添付して所轄庁に提出しなければならない。
一 定款に定める手続を経たことを証明する書類
二 変更後の定款
2 前項の定款の変更が、当該社会福祉法人が新たに事業を経営する場合に係るものであるときは、同項各号のほか、次に掲げる書類を添付して所轄庁に申請しなければならない。
一 当該事業の用に供する財産及びその価格を記載した書類並びにその権利の所属を明らかにすることができる書類
二 当該事業を行うため前号の書類に記載された不動産以外の不動産の使用を予定しているときは、その使用の権限の所属を明らかにすることができる書類
三 当該事業について、その開始の日の属する会計年度及び次の会計年度における事業計画書及びこれに伴う収支予算書
3 第 1 項の定款の変更が、当該社会福祉法人が従来経営していた事業を廃止する場合に係るものであるときは、同項各号のほか、廃止する事業の用に供している財産の処分方法を記載した書類を添付して所轄庁に申請しなければならない。
4 第 2 条第 3 項及び第 5 項の規定は、第 1 項の場合に準用する。
【3】注意点・留意すべきポイント
定款変更の認可を受けるまで一定の時間を要することがありますので、ゆとりを持ったスケジュールを立てることが大切です。
6. 会計・税務処理
【1】実施事項
会計・税務処理における実施事項は以下のとおりです。
(1)会計処理(譲受側)
譲受資産・負債の結合時の公正な評価額に基づき、資産・負債の受入処理を行います。支払対価が対象事業の公正な評価額(純額)を上回る場合には、会計上の借方差額が生じることになります。当該ケースにおいては、支払対価は、対象事業の不動産の時価と移転す
る他の資産及び負債をもとに事業計画(将来の損益予測や設備投資)を加味して、合理的な価格に決定されている必要があります。また、逆に支払対価が対象事業の公正な評価額(純額)を下回る場合には、会計上の貸方差額が生じることになり損益として処理します。
(2)会計処理(譲渡側)
資産・負債の譲渡に準じた会計処理を行います。なお、受取対価が対象事業の公正な評価額(純額)を下回る場合には、会計上の借方差額が生じることになります。その逆に受取対価が対象事業の公正な評価額(純額)を上回る場合には、会計上の貸方差額が生じることとなり損益として処理します。
(3)社会福祉充実計画及び社会福祉充実
残額(譲渡側、譲受側)事業譲渡等による社会福祉充実計画の変更及び事業譲渡等後の社会福祉充実残額を確認します。
(4)税務処理(譲受側)
事業譲渡等による税務処理が発生する場合は、税務処理を行います。
(5)税務処理(譲渡側) 事業譲渡等による税務処理が発生する場合は、税務処理を行います。
※公正な評価額とは、いわゆる時価のことです。
【2】実施内容
(1)会計処理(譲受側)
1 資産・負債の評価
譲受資産及び負債について、結合時の公正な評価額を付します。
(なお、事業譲渡等は、ある法人が、他の法人を構成する事業の支配を獲得することと考えられます。したがって、会計上、事業譲渡等の経済的実態は原則として「取得」と解釈されます。)
2 時価と支払対価の差額の処理
譲受資産・負債の公正な評価額と支払対価の間に差額が生じる場合があります。(差額についての会計処理の表示科目等の詳細については現在検討が行われています。)
3 その他論点:国庫補助金等特別積立金の引継ぎ
無償譲渡において、譲受事業に施設整備の補助金をうけた資産があり、補助金を返還せずに引き継ぐ場合、国庫補助金等特別積立金の帳簿価額をそのまま引継ぎます。
(2)会計処理(譲渡側)
譲渡事業の資産と負債の純額と受取対価の差額については、損益として処理します。
損益についての会計処理の表示科目等の詳細については現在検討が行われています。
(3)社会福祉充実計画(譲渡側、譲受側)
◇社会福祉充実計画について
既存の社会福祉充実計画がある場合は、事業譲渡等による事業環境の変化に伴い、社会福祉充実計画を変更する必要があるか検討します。検討の結果、社会福祉充実計画の変更が必要であると判断した場合は、所轄庁の承認又は届出が必要となります。
<所轄庁の承認または届出が必要な変更事由>
*2017 年(平成 29 年)1 月 24 日発出通知 「社会福祉法第55条の2の規定に基づく社会福祉充実計画の承認等について」
※社会福祉法第 55 条の 3(社会福祉充実計画の変更)
第 55 条の3 前条第1項の承認を受けた社会福祉法人は、承認社会福祉充実計画の変更をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、所轄庁の承認を受けなければならない。ただし、厚生労働省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 前条第1項の承認を受けた社会福祉法人は、前項ただし書の厚生労働省令で定める軽微な変更をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を所轄庁に届け出なければならない。
3 前条第3項から第 10 項までの規定は、第1項の変更の申請について準用する。
※社会福祉法施行規則第 6 条の 18(承認社会福祉充実計画の変更の承認の申請)
第6条の18 法第 55 条の3第1項に規定する承認社会福祉充実計画の変更の承認の申請は、申請書に、次の各号に掲げる書類を添付して所轄庁に提出することによって行うものとする。
一 変更後の承認社会福祉充実計画を記載した書類
二 第6条の 13 第2号から第4号までに掲げる書類
(4)税務処理(譲受側)
事業および法人形態によって、課税範囲は異なりますので、税務署等への確認を行いながら処理を進める必要があります。
事業譲渡等において、一般的には譲受側では以下の課税が生じる可能性があります。
・不動産取得税
・登録免許税
・法人税
(5)税務処理(譲渡側)
事業譲渡等において、譲渡側では以下の課税が生じる可能性があります。
・消費税
・法人税
・所得税
※<租税特別措置法第 40 条の規定の適用>
なお、事業譲渡する資産が租税特別措置法第 40 条の規定の適用を受けた寄附財産である場合、有償又は無償に関わらず、譲渡により原則として非課税承認が取り消され、譲渡した法人において納税が必要となりますので、譲渡法人が所轄の税務署において事前相談を行う必要があります。
法人における事業内容等によって、課税範囲は異なりますので、税務署等への確認を行いながら処理を進める必要があります。また、事業譲渡等により事業規模が変化することで、消費税等の課税義務の有無に変更が生じる可能性があることにも留意が必要です。
※租税特別措置法第 40 条(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)
第 40 条 1~5 (略)
6 第1項後段の規定の適用を受けて行われた贈与又は遺贈(以下この条において「特定贈与等」という。)を受けた公益法人等が、合併により当該公益法人等に係る第3項に規定する財産等を合併後存続する法人又は合併により設立する法人(公益法人等に該当するものに限る。以下この項において「公益合併法人」という。)に移転しようとする場合において、当該合併の日の前日までに、政令で定めるところにより、当該合併の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、当該合併の日以後は、当該公益合併法人は当該特定贈与等に係る公益法人等と、当該公益合併法人がその移転を受けた資産は当該特定贈与等に係る財産と、それぞれみなして、この条の規定を適用する。
7~20 (略)
※租税特別措置法施行規則 第 18 条の 19 第 13 項
13 法第 40 条第6項に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 法第 40 条第6項に規定する特定贈与等(以下この条において「特定贈与等」という。)を受けた公益法人等の名称、主たる事務所の所在地及び法人番号並びに合併予定年月日
二 当該公益法人等が法第 40 条第6項に規定する公益合併法人に移転をしようとする同項に規定する財産等の種類、所在地及び数量
三 当該公益合併法人の名称、主たる事務所の所在地及び法人番号(法人番号を有しない法人にあっては、名称及び主たる事務所の所在地)並びに当該公益合併法人が当該移転を受ける資産の使用開始予定年月日(法第 40 条第 13 項において準用する同条第五項後段に規定する政令で定める事情がある場合には、その事情の詳細を含む。)及び使用目的
四 第2号に規定する財産等(当該財産等が、当該公益法人等が当該特定贈与等を受けた財産以外のものである場合には、当該財産)を当該公益法人等に当該特定贈与等をした者の氏名及び住所又は居所並びに当該特定贈与等に係る贈与又は遺贈をした年月日及び承認年月日並びに当該財産の種類、所在地及び数量
五 その他参考となるべき事項
7. 資産・負債等の移管
【1】実施事項
資産移管における実施事項は以下のとおりです。
(1) 基本財産の譲渡(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の対象となる財産において、基本財産の所有権移転を目的とした契約を締結します。
(2) その他財産の譲渡(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の対象となる財産において、基本財産以外の譲渡について、各資産の現状および現品の有無を確認し、移転の要否を定めた上で、契約を取り交わします。
(3) 負債の譲渡(譲渡側、譲受側)
譲渡事業に負債がある場合は、債権者に対して債務引受の手続きを行います。
(4) 不動産の登記移転(譲受側)
登記変更が必要な資産については、法務局へ登記の変更手続きを行います。
【2】実施内容
(1) 基本財産の譲渡(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等は、特定の事業を継続していくため、当該事業に関する組織的な財産を他の法人に譲渡・譲受することであり、土地、建物などの単なる物質的な財産だけでなく、事業に必要な有形的・無形的な財産のすべてを他の法人に譲渡・譲受することであり、利用者との契約や雇用契約の承継、債務の移転を含みます。
このため、各社会福祉法人間の合意を確認するため、書面をもって事業譲渡等にかかる契約を行うことが一般的です。事業譲渡等の合意形成でも触れていますが、法律上必ず作成しなければならないものではありませんが、後々のトラブル防止にもなるため、事業譲渡等に関する契約を締結することが望まれます。
(2) その他財産の譲渡(譲渡側、譲受側)
その他財産の資産(基本財産、公益事業用財産及び収益事業用財産以外の財産)の処分等に特別の制限はありませんが、社会福祉事業の存続要件となるものはみだりに処分しないこととされていることから、各資産の現状及び現品の有無などを確認の上、譲渡対象についても事業譲渡契約において十分に考慮することが望まれます。
(3) 負債の譲渡(譲渡側、譲受側)
債務引受とは、譲渡法人から譲受法人に債務を移転すること(免責的債務の引受*の場合)になります。したがって、債権者からの承認を得る必要があります。
例として、独立行政法人福祉医療機構からの借入金がある場合の提出資料をまとめました。ただし、ケースによって違いがありますので、担当窓口に照会・相談するようにして下さい。
・債務引受申込書
・譲渡法人における施設廃止申請書(写)及び認可証(写)
/譲受法人における施設設置認可申請書(写)及び認可証(写)
・債務引受申込者と現債務者との譲渡契約書(写)
・譲渡法人及び譲受法人それぞれの定款/法人登記簿謄本/決算書(財産目録含む)
・譲渡法人及び譲受法人それぞれの事業譲渡等を行うことを協議した理事会議事録
・債務引受後の譲受法人の財産目録、収支予算書
・債務引受後担保物件の登記簿謄本(写)
(*)免責的債務の引受
債務が同一性を保ちつつ新債務者(譲受法人)に移転し、元の債務者(譲渡法人)が債権債務関係から離脱する債務引受のこと。
(4) 不動産の登記移転(譲受側)
土地、建物の不動産の所有者の登記名義人は、譲渡法人となっていることから、譲渡契約により所有権が移転した段階で、法務局へ所有権の移転の登記の申請を行う必要があります。
債務とともに不動産(抵当権が設定されている場合等)を譲受けた場合は、債務引受手続と併せて当該抵当権の債務者の変更の登記の申請も必要になります。
(5)抵当権の解除
譲渡資産の中に、譲受ける事業とは別の借入金に対する抵当権が設定されている場合があります。
その取扱については、相互の法人で協議することになりますが、通常は譲渡法人にて当該抵当権を解除し、法務局へ抵当権の抹消の登記の申請を行う必要があります。
【3】事例における取組み・工夫点
・調査事例では、事業譲渡契約の代わりに、基本財産については財産無償譲渡契約を締結し、その他資産については財産無償譲渡契約に付帯する形で書面を取り交わしました。
・流動資産については、移転の要否を明確に線引することが困難なものがあり、特に現預金の移管金額については幾度も協議を重ねることになりました。移管資産の協議については、十分な協議時間の確保が必要と考えられます。
・流動負債は一切引き受けず、固定負債は譲渡事業における長期設備投資金借入金および退職給与引当金のみ引き受けたため、債務引受手続きは独立行政法人福祉医療機構、その他金融機関1行となり効率的に進められていました。
8. 人事・労務関連
【1】実施事項
人事・労務関連における実施事項は以下のとおりです。
(1) 職員の引継ぎ(譲渡側、譲受側) 譲受法人は転籍対象職員の雇用条件などを検討し、 譲渡法人と基本合意を行います。
(事業譲渡等に伴う転籍においては、既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となります)
(2) 雇用条件の検討(譲受側)
(3) 職員説明会の実施(譲渡側)
法人間の基本合意を受け、転籍対象職員向けに説明会を実施し、転籍の承諾を得るようにします。
(4)雇用契約の締結(譲受側)
転籍に承諾した職員と雇用契約を締結します。
【2】実施内容
(1) 職員の引継ぎ(譲渡側、譲受側)
事業譲渡等の場合、合併の場合と異なって、職員が譲受法人に当然に引き継がれるわけではありません。そのため、対象事業における職員の引継ぎを行うためには、譲受法人へ転籍することを職員から承諾を得る必要があります。事業譲渡等に伴う転籍においては、既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となります。
(2) 雇用条件の検討(譲受側)
事業譲渡等においては、既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となるため、労働条件を変更する場合には、転籍承諾とは別に、労働条件変更の同意をとる必要があります。このような場合においても、各種手当を含めた賃金等が大きく変動しないよう調整が必要になります。また、転籍後の職位を従前の職位と比べて著しく下げたり、安易に人員を減らしたりしないよう配慮することが必要です。雇用条件については譲渡法人と基本合意を行うようにします。
(3) 職員説明会の実施(譲渡側)
転籍対象職員へ転籍後の処遇について説明会を実施します。既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となります。ただし、対象職員が転籍に承諾しない場合は、当該職員を引き継ぐことはできません。このため不安や不満を払拭するよう意識調査を行ったり、相談会を設けたりするなど、細やかに対応することが望まれます。
なお、労働組合が組織されており、労働条件が変更される場合は、労使合意の手続きが必要です。合意書を労使間で取り交わします。
(4) 雇用契約の締結(譲受側)
転籍に承諾した職員と雇用契約を個別に締結します。転籍承諾書があれば、雇用契約書を別途締結する必要はありませんが、監査等において雇用契約書が必要とされることがあるため、個別に雇用契約書を締結しておくことが望まれます。
【3】注意点・留意すべきポイント
事業譲渡等において、譲渡法人から譲受法人へ職員を転籍させる場合、事業譲渡等においては、既存の労働条件を維持したまま移籍するのが原則となります。
労働条件を変更する際には、転籍対象者に転籍後の労働条件を記載した同意書を提示し、同意をとっておく必要があります。また、退職・雇用として取り扱う場合は、譲渡会社では退職届を受領し、譲受会社では雇用契約を締結するなどの手続きが必要になります。
※労働基準法第 89 条(作成及び届出の義務)
第 89 条 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を 2 組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
※事業譲渡等指針
事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成 28 年厚生労働省告示第 318 号)がまとめられておりますので、参照ください。
◇社会福祉施設職員等退職手当共済の手続き
事業譲渡に伴う職員の転籍に関して、独立行政法人福祉医療機構が行っている社会福祉施設職員等退職手当共済では、譲受法人が共済契約を機構と締結する者であるとき又は既に共済契約を締結している者であるときは、譲渡法人との共済契約は解除となりますが、被共済職員は、共済制度上、退職とはならず被共済職員期間の通算が認められます。共済契約の承継関係及び新規加入施設の追加等の諸手続が必要であるため、手続き漏れにより、共済契約者及び被共済職員が不利益を被ることがないよう、独立行政法人福祉医療機構によく相談してください。
【4】事例における取組み・工夫点
調査事例では以下の取組を行い、対象職員のほぼ全員を円滑に転籍することができました。
・職員について個別面談を丁寧に実施し、賛同を得るよう努めました。
・半年間出向期間を設けて譲受法人の考え方や文化に馴染んでもらってから、転籍を決めてもらうにしたため、ほとんどの職員が十分納得の上、転籍を承諾してくれました。
9.利用者や利用者家族、地域への説明
【1】実施事項
利用者や利用者家族、地域への説明を行う場合に実施事項と考えられるものは以下のとおりです。
(1)利用者や利用者家族への事業譲渡等の説明(主に譲渡側)
施設の利用者や利用者家族へ事業譲渡等の説明を行い、個別承諾を得ます。
(2)利用者との再契約の締結(譲受側)
各利用者と改めて契約締結手続が必要な場合には、契約を締結します。
(3)地域への事業譲渡等の説明(主に譲渡側)
地域へ事業譲渡等の説明を行い、理解を得ます。
【2】実施内容
(1) 利用者や利用者家族への事業譲渡等の説明(主に譲渡側)
譲渡法人・譲受法人の両者は、利用者や利用者家族に動揺を与えないよう、事業譲渡等の目的や背景、譲渡後の運営などについて、家族会などを通じて全ての利用者家族へ説明し、承諾を得るようにします。説明会で出された意見などは議事録として記録を残すようにします。
(2) 利用者との再契約の締結(譲受側)
事業譲渡等の場合は、相互の法人間で定めた範囲の財産が個別に移転するにすぎませんので、それに伴って利用者との契約が当然に引き継がれる訳ではありません。そのため、譲受ける施設の利用者や利用者家族から承諾を得るとともに、契約締結手続が必要な場合には、改めて譲受法人と個別に契約を締結する必要があります。
ちなみに、合併の場合は、消滅する法人の権利・義務の一切を存続法人が引き継ぐことになるため、消滅する法人の利用者との契約は、当然に存続法人に引き継がれ、存続法人はそれら利用者と改めて契約を締結する必要はありません。
(3) 地域への事業譲渡等の説明(主に譲渡側)
事業譲渡等の際に、必ず地域へ説明しなければならないわけではありません。施設設置の経緯や背景、地域の事情などを勘案し、必要に応じて地域の不安を解消するために、地域に対して説明会を実施することが望まれます。
説明会対象者は施設運営に関わる方たちや地域の代表者(地区会長)などが想定されますが、両法人間で協議し、対象者を選定するようにしてください。説明会では、譲渡法人・譲受法人両者で事業譲渡等の目的や背景、譲渡後の運営などを説明し、質疑応答を交えながら、理解を得るように努めます。説明会で出された意見などは念のため議事録として記録を残すようにします。
【3】注意点・留意すべきポイント
(1)利用者等への事前説明と理解の醸成
事業譲渡等の利用者については、契約主体の変更になるため、利用者や利用者家族への説明及び個別承諾を得るとともに、契約締結手続が必要な場合には、改めて譲受法人と個別に契約を締結する必要があります。
事業譲渡等によって、利用契約の再締結の手続(例:高齢者施設における入所契約及び重要事項説明書等)、サービス内容や利用料金の変更の有無等についてあらかじめ十分に説明した上で、承諾を得るようにしてください。
(2)地域住民への事前説明
事業譲渡等によって、特に地域における福祉サービスについて変更等が生じる場合には、地域住民や自治会への説明を行うことが望まれます。社会福祉法人の事業譲渡等及び今後の実施事業計画に関して理解を得ておくようにしてください。
10.規程・マニュアル類、システムなどの整備
【1】実施事項
規程・マニュアル類、システムなどの整備を行う場合に実施事項と考えられるものは以下のとおりです。
(1) 各種規程・マニュアル類の整合性の確保(譲受側)
必要に応じて、各種規程・マニュアル類の整理・統合を図ります。
(2) 委員会などの運営検討(譲受側) 必要に応じて、委員会などの運営について検討し ます。
(3) 各種システムの整合性の確保(譲受側)
必要に応じて、情報システム、経理システムなどの各種システムの統合を図ります。
(4) 名義変更(譲受側) 必要に応じて、各種名義変更を行います。
【2】実施内容
(1) 各種規程・マニュアル類の整合性の確保(譲受側)
事業を譲受けた後に、業務遂行に支障が生じないよう、譲受法人の理念に基づいた運営方針および規程、あるいは運営マニュアル類の整備を行います。
これらは事業譲渡等を推進するプロジェクトチームの中に個別テーマを検討する「○○規程検討ワーキング」などを設けて、相互の法人から実務責任者、実務担当者が参画して検討、作業を行うとよいでしょう。
(2) 委員会などの運営検討(譲受側)
譲受ける施設内で「事故防止検討委員会」など、個別テーマの検討委員会を設けている場合、譲受け後の委員会運営について、譲受法人の既存委員会と整合性を図り、必要に応じて規程類を修正します。
(3) 各種システムの整合性の確保(譲受側)
譲受ける施設で経理システムや情報システムなどITを活用したシステムが導入されていれば、譲受け後の業務運営に支障が生じないよう、譲受法人のシステムと整合性を図ります。これら作業には一定の時間を要することが想定されますので、システム会社を活用し、前広に検討・作業に着手することが必要です。
ホームページなど外部への情報発信媒体を作成している場合は、それらの変更も必要です。
(4) 名義変更(譲受側)
名義変更が必要なものを洗い出し、事業譲渡後の法人名に変更します。
(例)保険契約 委託契約 リース契約 保守契約 など
社会福祉法人の事業承継・M&Aは、専門の行政書士にお任せ下さい
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【奈良県】・奈良市・大和高田市・大和郡山市・天理市・橿原市・桜井市・五條市・御所市・生駒市・香芝市・葛城市・宇陀市
【和歌山県】・和歌山市・海南市・橋本市・有田市・御坊市・田辺市・新宮市・紀の川市・岩出市
【鳥取県】・鳥取市・米子市・倉吉市・境港市
【島根県】・松江市・浜田市・出雲市・益田市・大田市・安来市・江津市・雲南市
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【広島県】・広島市・呉市・竹原市・三原市・尾道市・福山市・府中市・三次市・庄原市・大竹市・東広島市・安芸高田市・江田島市
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【徳島県】・徳島市・鳴門市・小松島市・阿南市・吉野川市・阿波市・美馬市・三好市
【香川県】・高松市・丸亀市・坂出市・善通寺市・観音寺市・さぬき市・東かがわ市・三豊市
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